TMの効果に関する研究は、以下の4つの基準において高く評価されています。
1. 当事者とは無関係な科学者による再現性:一つの大学や研究所である結論が得られたならば、その結論はかなりの信頼性があると言えます。しかし、その結論が、別の15の大学や研究所で再現されたならば、その結果はいっそう大きな信頼性を得ることができます。
2. 偶然性の確率(p値):偶然性の確率(P値)とは、ある結論が調査されている原因によってではなく、偶然によって起こる可能性を統計学的に計算したものです。一般に、偶然性の確率は5/100以下(p<.05)でなければならないと考えられています。TMの効果に関する研究のP値は非常に小さく、TMの効果には一貫性があることが示されています。
3. 研究雑誌への論文の掲載:研究雑誌は質の悪い研究を取り除くフィルターのような役割を果たしています。研究雑誌に論文が掲載されるときには、事前に、その論文を審査する「査読」が行われます。権威のある研究雑誌であればあるほど、この査読はたいへん厳しいものとなります。これまでに380件以上のTMに関する論文が、世界中の160の研究雑誌に掲載されました。そのなかには、非常に権威ある研究雑誌も含まれています。これは一つのテクニックについて書かれた論文の数としては、並外れて大きな数字です。
4. 研究の質の高さ:TMに関する研究の多くは、一重盲検無作為化対照実験(RTC)などの質の高い調査方法によって行われています。RCTにおいては、被験者を無作為に実験グループ(TMを行う人たち)と対照グループ(TMを行わない人たち)に振り分けて、両グループにおける効果を比較しますが、比較する研究者自身には誰がどちらのグループに属しているか知らされません。そうしたTMに関する全ての調査結果を集めて分析してみると(メタ分析)、TMの研究の結果には次のような傾向があることがわかりました。
①質の高い研究ほどTMのよい結果が現れる。 ②TMに対して中立的または否定的な研究者でも、TMの組織と関わりのある研究者と同じ結果を得ている。 ③TMに期待していなかった被験者グループと、期待していた被験者グループを比較しても、同じ結果が現れる。 ④TMを長く続ければ続けるほど、その効果は大きくなる。 ⑤TMの実践が規則的な人たちの方が、不規則的な人たちよりも大きな効果を得ている。
記事の多くは「超越瞑想・公式サイト」からの転載または要約です。 公式サイトには関連情報が数多く紹介されています。ぜひご参照下さい。 👉https://maharishi.or.jp/cardiovascular-disease/
1,テロメラーゼへの効果
遺伝子の発現、米国国立衛生研究所(NIH)の助成金による研究
; Salerno, John W. ; Fagan, John, “Effects of Lifestyle Modification on Telomerase Gene Expression in Hypertensive Patients: A Pilot Trial of Stress Reduction and Health
Education Programs in African Americans”, PLOS ONE, Edited by Kathrin Eller, vol. 10, issue 11, p. e0142689, Pub Date: November 2015
DOI: 10.1371/journal.pone.0142689 Bibcode: 2015PLoSO.1042689D
掲載ジャーナル:PLOS ONEはIF(インパクトファクター)が3.057(2015年)であり、indexed by PubMed(Medline)(PubMed(MEDLINE)への採録)論文です。
※IF(インパクトファクター):その雑誌に掲載された論文が一年あたりに引用される回数の平均値で論文の影響度を表す指標
※ PubMed(MEDLINE)への採録論文:PubMed は米国国立医学図書館(NLM)のデータベース MEDLINEを中心に構成され、MEDLINE に収録される雑誌は、品質評価の委員会で 、コンテンツの質やピアレビューのプロセス等の基準を設け審査されており、医学分野の高品質の論文と言える。
●土田賢省教授(東洋大学)に解説していただきました。
テロメアとは、染色体の両端にある反復ヌクレオチド配列からなる部分で、染色体の末端の劣化や近隣の染色体との融合から保護をしています。テロメアが年齢と共に短くなると、染色体はその保護が失われて損傷を受けやすくなります。その結果、生理的な劣化と老化が起こります。この研究はTMが、テロメアの長さを維持する作用をもつ酵素テロメラーゼの遺伝子発現を増加させることを示した研究です。図のグラフはTMをすることが健康なライフスタイルと同じぐらい重要であることを科学的に示しています。その次のステップとしては、TMと健康なライフスタイルの二つを組み合わせることが考えられます。これらの結果は、TMは生物学的年齢を減少させ、死亡率を減少させるというDNAレベルの説明を提供するものです。
2,左心室肥大予防におけるストレス軽減
高血圧アフリカ系アメリカ人に対するTMと健康教育のランダム化試験
掲掲載ジャーナル:Ethnicity & Diseaseはpeer-reviewed journalで、IF(インパクトファクター)が1.847(2019年)であり、indexed by PubMed(Medline)((PubMed(MEDLINE)への採録)論文です。
※peer-reviewed journal:当該分野の複数の専門家によって査読されて、掲載可となった論文のみが掲載される学術論文誌
※IF(インパクトファクター):その雑誌に掲載された論文が一年あたりに引用される回数の平均値で論文の影響度を表す指標
※PMCID: PMCIDは、国立衛生研究所(NIH)から助成を受けた研究の成果論文が、NIHパブリックアクセス方針に則り、PMCへ提出されたことを示す固有識別子です。ですので、本論文の研究が国立衛生研究所(NIH)から助成を受けた研究であることを示しています。
【概要】
●背景:アフリカ系アメリカ人は、心血管疾患(CVD)の発生背景率が顕著に高い。左心室肥大(LVH)は、CVDの独立危険因子であり、この差異の一因となっている可能性がある。心理的ストレスは、アフリカ系アメリカ人や他の集団でもLVHの原因となりうる。
●目的:当研究では、超越瞑想(TM)技術によるストレス軽減目的が、高血圧のアフリカ系アメリカ人成人のLVHを予防する効果について評価した。
●場所:マーティンルーサーキング病院-チャールズR.ドリュー場所医科学大学、カリフォルニア州ロサンゼルス。 ●方法:当試験では、85人のアフリカ系アメリカ人の成人(平方法均52.8歳)をTMプログラムあるは健康教育(HE)対照群のいずれかにランダムに割り当てて、事後テストを行った。参加者は研究の始めと6か月後に検査され、Mモード心エコー検査による左室重量指数(LVMI)、血圧、心理社会的ストレス、及び行動因子を測定した。結果の変化は、グループ間ではANCOVAで分析し、グループ内では対応のあるt検定で分析した。
●結果:TMグループは、HEグループと比較して有意に低い結果LVMIを示した。(-7.55gm/m2, 95% CI -14.78 to -.34 gm/m2, P=.040)。 どちらの介入もグループ内で有意な血圧の低下を示した(SBP/ DBP changes for TM: -5/ -3 mm Hg, andfor HE: -7/-6 mm Hg, P=.028 to <.001)が、グループ間での変化は有意ではなかった。さらに、両方のグループで、有意な怒りの減少が見られた(p=.002 to .001)。この他には、ライフスタイル要因の変化はなかった。
●結論:これらの発見は、TMによるストレス軽減がLVMIの進結論行を防ぐのに効果的であり、したがって高リスクのアフリカ系アメリカ人患者のLVHおよび関連するCVDを防ぐ可能性があることを示唆している。
3,学業成績の向上と大学等への進学の増加
[2](図2の文献):Colbert, R. D., and S. Nidich. "Effect of the Transcendental Meditation Program on Graduation, College Acceptance and Dropout Rates for Students Attending an Urban Public High School, Education, 133(4), pp.495-501(2013).
•掲載ジャーナル:Educationは四半期毎に出版される教育分野の査読付き学術雑誌(quarterly peer-reviewed academic journal)で、1880年スタートという長い伝統を持っています。Educationの論文はEBSCO databases(EBSCO社による広範な学術分野の査読誌の全文情報を収録したデータベース)やEducati Educationの論文はEBSCO databases(EBSCO社による広範な学術分野の査読誌の全文情報を収録したデータベース)やEducati Resources Information Center(教育研究と情報のオンラインデジタルライブラリで米国教育省の教育科学研究所が後援)等に索引付けされ要旨が登録されています。
●土田賢省教授(東洋大学)に解説していただきました。
【図1の解説】
189人の(授業についていけない)生徒に対して、テストの3カ月前から毎日学校で1日2回TMを実習するグループと何もしないグループに分けて、カリフォルニア州に住む公立学校の2年生(小学生)から11年生(高校生)が毎年受ける STARテスト(カリフォルニア州の標準テスト)を用いて算数と英語の成績の伸びを比較しています。その結果、算数では、成績水準が1以上になった生徒の割合はTM実習をした生徒では40.7%、TM実習をしてない生徒では15%(有意確率が0.01)で、英語では成績水準が1以上良くなった生徒の割合はTM実習をした生徒で36.8%、TM実習をしてない生徒で17.2%(有意確率が0.05)となり、TM実習をした生徒とTM実習をしてない生徒のグループで統計的に優位な差が見られました。このことは、TM実習が算数と英語の両方で成績向上に寄与していると考えて良いと統計学的に言えることを示しています。
※統計の有意の補足:有意確率(p-valueでpと書きます)はある事象(この例では、TM実習をしている生徒(グループ)とTM実習をしていない生徒(グループ)で成績の向上に差が出ること)が偶然起こる確率を示しています。算数で上記のような差が2つのグループで偶然起こるのは0.01(1%)であり、このような1%のことが偶然起こったというよりも、2グループの差はTMを実習しているか否かだけ(実験では、両グループでそれ以外の条件は殆ど同じにしていますので)なので、この差はTMの実習か非実習によるものと判断して良いという考え方です。一般に有意確率pが0.05よりも小であれば統計的に有意と判断します。
【図2の解説】
この研究では、TMの実践が高校の卒業率や大学への進学率等をもたらすかを検証しています。調査・分析は、米国東海岸の都市部の高校の学校記録を分析する方法で、4年の間に入学した235人の学生全員を対象にして行われています。図2示すように、TMを実習する生徒の大学等への進学率は 59.3%であり、TMを実習しない生徒の進学率は 33.3% であり、有意な差があることが示されました(有意確率P=0.002)。また、その他にも、TMを実習しない生徒と比較して、TMを実習した生徒の卒業率が15%高いことも示されました(有意確率p=0.012)。このようにTMの実習と非実習で、生徒の卒業率や進学率等に関して、はっきりとした有意な差が生じたことが示されています。
4,治癒者を癒す:2019年コロナウィルス・パンデミック中における、
救急臨床医に対する、TM介入の実行可能性、受容性と発展的有効性
CI:信頼区間、GAD-7:全般性不安障害スケール7項目、PHQ-8:被験者の健康に関する質問8項目、
PSS-4:知覚ストレススケール4項目、;PROMIS SF(Patient Reported Outcomes Measurement Information System Fatigue Short Form)被験者が報告する健康状態の信頼できる正確な測定システムとその結果の手短な報告書、T1:ベースライン、T3:TM実習開始から3か月後
定性的に、参加者のほとんどが、TMにより全体的に幸福感、安心感が増し、TMのプラスの影響により、「意思決定をより容易にすることができる」、そして「TMにより、私はよりよい医師かつ指導者になっていると思う。またローテーションの勤務体制にて、よりよい同僚になっていると思う。」等の報告がなされた(表4参照)。
[Reference]
Desiree R. Azizoddin, Noelia Kvaternik, Meghan Beck, Guohai Zhou, Mohammad Adrian Hasdianda, Natasha Jones, Lily Johnsky, Dana Im, Peter R. Chai, Edward W. Boyer,
“Heal the Healers: A pilot study evaluating the feasibility,acceptability, and exploratory efficacy of a Transcendental Meditation intervention for emergency clinicians during the coronavirus disease 2019 pandemic”, JACEP Open 2021;2:e12619.wileyonlinelibrary.com/journal/emp2 1 of 11 https://doi.org/10.1002/emp2.12619
•掲載ジャーナル:JACEP Openは米国の救急医から成る専門組織(the American College of Emergency Physicians )が発行する公式の研究論文誌で、国際的な査読付きオープンアクセスジャーナルです。
また、JACEP Open はWiley (1807年設立の科学、医学、教育などの分野の世界的な学術出版社)によって発行されており、オンラインでのみ入手できる。
【概要】
●目的:救急臨床医は燃え尽き症候群の発生率が高く、これが臨床医自身、患者、および医療システムにマイナスの結果をもたらしている。本研究は、対照群なしの単群パイロット研究で、2019年コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時の救急臨床医について、超越瞑想(TM)介入の実行可能性を評価することを目的とする。さらに、燃え尽き症候群、睡眠、心理的健康の改善に関する潜在的有効性についての解明を行う。
●手法:本研究では、TMの指導を受けて実習(8個人またはグループ、対面およびリモートセッションで3か月間)して頂ける救急臨床医(医師、看護師、および医師助手)を都市の2病院から募集した。セッションへの参加が実行可能性の主要結果となるが、セッションへの参加率を6/8と事前に指定し、燃え尽き症候群を主要なアウトカムとした。参加者が報告した実行可能性の測定値と検証された測定値、睡眠障害、燃え尽き症候群、うつ病、不安神経症、睡眠障害、およびストレスの割合は、ベースラインおよび1か月と3か月のフォローアップで収集した。 分析には、記述統計と線形混合効果モデルを用いた。
●結果:参加者は、14人の医師(46%)、7人の看護師(22%)、および10人の医師助手(32%)で、その中で61%が女性であった。 TMトレーニングと在宅瞑想90.6%が6/8のトレーニングセッションに参加し、臨床医は実習を行うことができた。そして80.6%が平均して少なくとも1日1回瞑想していると自己申告した。参加者の燃え尽き症候群は大幅な減少を示し(P <.05;効果量、コーエンのd = 0.43–0.45)、うつ病、不安、ストレス、睡眠障害の症状(P値<.001;コーエンのd =0.70–0.87)でも改善が見られた。
●補足:・コーエンのd効果量は、心理学等でよく使われ、効果の程度を解釈する際に、小(0.2)、中(0.5)、大(0.8)などの一般的な目安とされる。
・ベースラインは研究を開始する時点における対象者の年齢,性別,疾患の重症度といった背景因子や臨床特性の状態・値の事を指す。
5,退役軍人において、TMは有意にPTSDの減少をもたらす
controlled trial of non-trauma focused meditation compared to exposure therapy in veterans with PTSD”, The Lancet Psychiatry, Volume 5, Issue 12, pp.975-986, December 2018.
•掲載ジャーナル:The Lancet Psychiatryは、臨床、公衆衛生、および健康、医療分野において、学術的に信頼できる、世界水準の知識(情報)源となっている。 Lancet Psychiatryのインパクトファクターは27.083で、世界の代表的な156の精神医学ジャーナルの中で2番目にランクされている。
【概要】
●背景:心的外傷後ストレス障害(PTSD)は複雑で治療が難しい障害であるが、退役軍人の10〜20%が罹患している。先行研究では、外傷(トラウマ)に焦点を当てていない治療が、PTSD症状の軽減において外傷暴露療法と同程度効果的であるか否かという問題が提起されている。本研究は、トラウマ(外傷)に焦点を当てない実践である超越瞑想(TM)と非劣性臨床試験における長期曝露療法(PE)と比較し、さらにこの両方の療法とPTSD健康教育(HE)のコントロール群と比較することを目的とした。
●手法:米国カリフォルニア州の退役軍人省サンディエゴヘルスケアシステムでランダム化比較試験を実施した。兵役の実働に起因するPTSDの診断を現時点で受けている203人の退役軍人をブロックランダム化によってTMとPEグループ、そしてHEのアクティブコントロールグループにランダムに割り当てた。各治療は12週間にわたって12回のセッションを提供し、毎日の在宅診療が行われた。 TMとHEは主にグループで実施し、PEは個別に与実施した。主な結果は、臨床医が管理するPTSDスケール(CAPS)によって評価された、3か月にわたるPTSD症状の重症度の変化である。分析は、ITTを意図したものであった。TMがCAPSスコアの改善においてPEに対して非劣性を示し(Δ=10)、TMおよびPEがPTSDHEよりも優れていると仮説を立てた。
●結果:2013年6月10日から2016年10月7日までの間に、203人の退役軍人が介入グループにランダムに割り当てられた(68人がTMグループ、68人がPEグループ、67人がPTSD HEグループ)。 TMは、ベースラインからテスト後3か月までのCAPSスコアの変化において、PEに対して有意に非劣性であった(平均変化のグループ間の差-5・9、95%CI -14・3から2・4、p = 0・0002)。標準的な優位性の比較では、CAPSスコアの有意な低下がTM対PTSD HE(–14・6 95%CI、–23・3〜-5・9、p = 0・0009)、およびPE対PTSD HE(– 8・7 95%CI、-17・0から-0・32、p = 0・041)。 TMを受けた人の61%、PEを受けた人の42%、およびHEを受けた人の32%がCAPSスコアに臨床的に有意な改善を示した。
●結果の解釈:非外傷(非トラウマ)に焦点を当てた治療法であるTMは、退役軍人のPTSD症状の重症度を軽減するための実行可能な選択肢であり、PTSDの従来の曝露ベースの治療を受けたくない、あるいは、その治療に反応を示さない退役軍人にとって効果的な代替手段となりえる。
●本研究の資金源:本研究は、米国陸軍医療国防総省によって支援された調査である。助成金番号はW81XWH-12-1-0576およびW81XWH-12-1-0577である。
6.長期瞑想実践のトランスクリプトミクス:
健康に有害なストレス効果の予防/逆転のエビデンス
・掲載ジャーナル:Medicinaは、1920年以来、リトアニア健康科学大学から発行されている査読付き科学ジャーナルで、IF(インパクトファクター)は2.43であり、 Scopus、SCIE(Web of Science)、PubMed、MEDLINE、PMC、Embase、その他の多くの科学研究論文のデータベースでインデックされている。
【概要】
●背景と目的:ストレスは適応メカニズムを過負荷にし、エピジェネティックにつながる可能性があり、健康に有害な影響を及ぼす。これらの影響の逆転に関する研究は、まだ始まったばかりである。初期の結果では、いくつかの瞑想法には、繰り返し実習することで成長する健康上の利点があることが示唆されている。この研究では、38年間の1日2回の超越瞑想(TM)の実習によるトランスクリプトミクス効果の可能性に焦点を当てた。
●対象と手法:先ず、イルミナ®BeadChipマイクロアレイテクノロジーを使用して、健康な実習者と厳密に一致するコントロール群(n = 12、65歳)との末梢血単核細胞(PBMC)におけるグローバルな遺伝子発現の違いを求めた。次に、これらのマイクロアレイの結果を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって、遺伝子のサブセットを用いて検証した。より大きなTMとコントロール群(n =45、63歳)でqPCRを使用して検証した。バイオインフォマティクス調査では、Ingenuity®Pathway Analysis(IPA®)、DAVID、Genomatix、およびRパッケージを採用した。
●結果:マイクロアレイでの差次的発現の厳密な基準を満たすことが分かった200個の遺伝子と遺伝子座実験では、2つの群を区別する表現の対照的なパターンを示した。差次的免疫機能とエネルギー効率に関連する発現が最も明白であった。 TMグループでは、コントロール群と比較して、炎症に関連する49の遺伝子すべてがダウンレギュレーションされていたが、防御反応の抗ウイルスおよび抗体成分に関連する遺伝子はアップレギュレートされた。最大の発現差は、赤血球機能に関連する6つの遺伝子によって示された。コントロール群のエネルギー効率が低い状態を反映しているように見えた。これらの遺伝子発現の違いは、よく一致するマイクロアレイグループと、より大きく、あまり一致しないグループの両方において、qPCRによる測定での発現で得られた。
●結論:以上の発見は、瞑想の初期のランダム化試験の結果に基づく予測と一致しており、不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、心血管疾患(CVD)、およびその他の慢性障害の軽減の根底にあるストレス関連の分子メカニズムの証拠を提供する可能性がある。
【用語】
・トランスクリプトミクス(transcriptomics)とは生体内細胞の伝令RNA(mRNA)の総合的な研究分野を意味する。特に、細胞内伝令RNAの量の解析で形質発現の遺伝子を選出し、その発現状態を網羅的・定量的に調べることを目的とする。
・ダウンレギュレーションとは継続的または過度な刺激により、神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が低下すること。
・アップギュレ―ションとは神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が増大すること。
7,√1%効果:「米国の一般的殺人の減少」
SAGE Open, 7(1), 1-16
・掲載ジャーナル:SAGE Openは、オープンアクセスの査読付き学術論文である。特に行動科学および社会科学のコミュニティを対象としている。2021-2022年におけるSAGE Open のIF(インパクトファクター)は1.356である
●土田賢省教授(東洋大学)に解説していただきました。
図1において、赤い線は、米国の2002年11月から2010年までの月次の一般的(故意および過失による)殺人率を示している。殺人率は1億人当たりの各月における1日当たりの率である。 殺人率が上下しているのは、主として強い季節的変動が原因と推察される。殺人率は最も暑い7月が最大、最も寒い1月が最低である。
矢印⇒は、2002年11月から2006年までの基準期間の殺人率の増加傾向を示しており、2007年1月(グラフの縦の点線)から2010年12月まで減少傾向に転じている。その期間、TMシディ・グループの人数は米国人口の1%の平方根前後を維持していた。
2002-2006年の基準期間の米国の月次の殺人率の増加傾向が逆転して、非常に顕著な減少傾向へのシフトが起きている。殺人率は基準期間の平均レートに対して 21.2%(年率5.3%) 減少している。 実験期間も基準期間の傾向がそのまま続けば起きていたと推定される8,157人の殺人が、この傾向の減少によって回避できたと言える。
殺人率の減少傾向が偶然に起こった確率は、 1兆分の2.7 (p = 2.7 x 10-16)である。 統計学的には、この確率はとても小さく、小数点に続きゼロが15個、その後に27がくる数 (0.00000000000000027)である。この確率は、社会科学において統計的に有意を示すのに、一般的に要求される値 p = 0.05 (5 in 100)より遥かに小さく、√1%効果を示すのに十分である。
8、マハリシ効果:「全米206都市の暴力的犯罪の減少」
Quasi-Experiment. Journal of Health and Environmental Research, 3(3-1), 32-43
・掲載ジャーナル:Journal of Health and Environmental Research(JHER)は、公衆衛生と環境科学の分野の査読付きの国際学術雑誌である。本雑誌の2020年のインパクトファクターは3.390で、「環境科学」の領域で274中118位に「公共、環境&労働安全衛生」の領域で203中68位にランク付けされている
●土田賢省教授(東洋大学)に解説していただきました。
図1は、10万人以上の人口をもつ全米の206の都市の暴力的犯罪率のFBIの月次データ分析をまとめたものである。全ての都市で、この調査(TMおよびTM-Sidhiプログラムのグループ実践の)期間で連続したデータを入手することができた。暴力的犯罪は広いカテゴリーであり、殺人(homicide)、窃盗、加重暴力、レイプ等を含む。暴力的犯罪率は、赤い線でグラフに表されている。
矢印は、基準期間におけるわずかな減少傾向から2007-2010年の実験期間における急な減少傾向にシフトしていることを示している。また、暴力的犯罪には、大きな季節的サイクルがあり、暑い季節には暴力が多くなり、7月が最高となり、最低になるのは1月であることも示されている。
実験(TM・TM-Sidhiプログラムのグループ実践)期間中、暴力的犯罪率は、基準期間の平均に比べ18.5%減少した (年率4.635%) 。本研究の結果から、都市部での暴力的犯罪率の低下によって、 186,774 件の暴力的犯罪が防げたと推定することができる。
力的犯罪率の減少傾向が偶然に起こった確率は、1億分の2.7、すなわち p = 2.7 x 10 −8 (両側検定)である。この確率は非常に小さく、小数点にゼロが7つ続いて27となるものである (0.000000027)、統計学的に十分に有意であると言える。
注・データ出典ー都市部暴力犯罪: FBI Unified Crime Report database. 暴力的犯罪率は、1億人に対する毎月の1日当たりの率であ
9、「TMによる特性不安の減少」
‐メタ分析:マインドフルネスや他の瞑想法との比較
・掲載ジャーナル:Psychological Bulletin は、1904年以来アメリカ心理学会が出版する月刊の査読付き学術雑誌である。Psychological Bulletin の2012年のインパクトファクターは17であり、現在は21を超えており、心理学の分野にいて定性的および定量的な分析/評価の両方の研究を含む心理学分野の総合的な学術雑誌である。
図1は、ドイツのケムニッツ市にあるケムニッツ工科大学で行われた被験者数1896名に対する30件の研究の独立したメタ分析の結果をグラフで表示したものである。
図中のdは標準化平均差で、dは標準偏差ユニットの介入群と対照群の差を示す尺度である。 慣例によって、d ≥ .80は大きな効果、d = .5 は中程度、d = .2 は小さな効果と考えられている。これらを前提とすると、TMがマインドフルネスや他の瞑想法に比べて、否定的感情、特性不安、神経症的傾向の減少と自己実現の増加において、有意により大きな効果があったことが示されている。一方、TM以外の他の瞑想テクニックの効果は中程度から小さな効果の範囲であった。また、マインドフルネス瞑想は、マインドフルネス・テクニックを用いない他の瞑想法に比べて優れているとは言えないことも示唆されている。
注: 特性不安とは、性格特性として通常どれだけ不安であるかを意味し、ストレスがかかった際に不安な状態になる傾向を指す。特性不安が高い場合、ストレスがかかると「常に」不安になりやすいと言える。
10、TMによる日本の地震・津波災害のストレスの軽減
・掲載ジャーナル:Psychological Reports は、心理学と精神医学の研究分野をカバーする隔月発行の査読付きの国際学術雑誌であり、2021-2022年のインパクトファクターは2.053である。
図1は、2011年の日本の地震と津波被害を受けた二つの都市(仙台市と石巻市)の住民に対するTM受講前後のストレスの変化の結果である。TM受講後のストレスが減少している。比較のために、地震と津波被害のなかった東京の人たちについても調査しており、同様の傾向を見せている。TMを学ばなかった対照群の人たちには殆ど変化は見られなかったことが示されている。
[概要]本研究では、日本の2011年の地震と津波で直接影響を受けた二つの都市(仙台市と石巻市)の住民171人にTMテクニックを指導した後、自己申告でのストレス症状の変化を調査している。また、比較のために、災害を受けていない326人の東京の住民に対して TM受講前後の変化を調査し、さらに介入のない(TMを学んでいない)対照群( n = 68)との比較を行っている。ストレスレベルの評価は、参加者が記入した心身症状の評価チェックリストの結果に基づくものである。
災害エリアで、TMテクニックを学んだ参加者は、対照群に対してトータル症状スコアで事前テストと事後テストの比較において顕著な減少を示している (効果量 = −1.09)。 この結果は、TMには、災害によるトラウマからの軽減に繋がる潜在的な効果があることを示唆している。