一般社団法人マハリシ総合教育研究所 代表理事 鈴木志津夫が、月刊ユートピア編集者の質問に答えるかたちでTMをご紹介いたします。
※「月刊ユートピア」は(一社)マハリシ総合教育研究所が発行している会員向け月刊誌です。この記事は「月刊ユートピア」2006年5月号から引用しました。
TMの基礎知識
TMの歴史、禅との関係、純粋意識と無我の境地、健康増進などについて、その大枠を鈴木代表がご説明いたします。
TMは、日本では何人ぐらいの方が学ばれているのでしょうか?
TMは、半世紀前に、インドの教育者であり科学者であるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーにより世界に紹介されました。以来この50年間に世界各国に広がり、全世界で約500万人が受講されたと言われています。日本では、過去30年間に約6万人がTMを受講されました。(2022年5月現在は世界で1000万人、日本では7万人を越えています。)個人的に学ばれた方が大半を占めていますが、住友重機械工業、銀座松屋、京セラなど、数百社の企業において企業研修としても採用されています。TMを規則的に2ヶ月以上実習しますと、上級のTMシディテクニックを受講出来ますが、日本ではこれまでに5000人の方がTMシディテクニックを受講されています。
TMは、マハリシが作り出した瞑想法なのですか。
いいえ、TMはマハリシが創作した瞑想法ではありません。TMは、古代インドから伝わるヴェーダと呼ばれる知識体系に由来しています。ヴェーダとは「知識」という意味で、40の学問分野から構成されています。40の分野の一つがヨーガと呼ばれる部門で、人間を悟りの境地へと導く知識として広く知られています。TMは悟りの境地、つまり高次意識をもたらすヨーガの瞑想法の中核であり、5000年以上の年月にわたり大切に純粋な形で継承されてきました。様々な瞑想法が世界には存在していますが、おそらくTMは人類最古の瞑想技法と言ってもさしつかえないでしょう。この古代から伝わる瞑想法を、マハリシの師であるグル・デヴが、現代人がよく理解できるように体系化し世界に紹介・普及するという役割をマハリシに与えました。このグル・デヴのご意向に基づき、マハリシは半世紀前から古代の瞑想法TMを世界に紹介してきました。ですからマハリシが開発、発明した瞑想法ではなく、古代から継承されてきたヴェーダの伝統的な瞑想技法を、その教えの純粋性を損なうことなくTMとして体系化し、マハリシは世界に伝えているのです。
日本で、多くの方が禅を実践していますが、TMは禅よりも古いのですか。
はい。禅ももともとはインドの瞑想に由来しています。インドで瞑想という言葉はディヤーナ(dhana)と発音されています。ディヤーナがインドから中国へ伝わると「禅那」という漢字が当てられました。中国禅宗の開祖とされる達磨大師は、約1500年前、西暦520年頃に、中国に渡ったのではないかとされています。その後、禅那が日本に渡ってきますと、同じ漢字で「ゼンナ」と発音するようになりました。「ナ」という発音が脱落し、一般的に禅「ゼン」と呼ばれています。禅は長い伝統を持っている素晴らしい瞑想技法ですが、インドのディヤーナの中核であるTMの歴史は、さらに深く、5000年以上続いている古代の瞑想法です。したがって、TMは禅のお母さんと言ってもさしつかえないと思います。
それだけ古い歴史を持つのであれば、TMのやり方はむずかしいのですか。
TMの実習は自然で無理がなく、とても簡単です。TMではまず楽に座ります。快適に座ります。椅子に座ってもよいし、ソファーの上に座ってもかまいません。あぐらでも良いし、座禅のように結跏趺座(かっかふざ)を組んでもよく、また足を伸ばして座ってもかまいません。楽に座ります。次に目を閉じTMをはじめます。身体を動かしてもかまいません。これを朝夕一日二回、一回15分から20分行います。また、どんな場所でもTMを実践することができます。自宅で、オフィスで、また電車や自動車の中でも行えます。4歳ぐらいのお子さんでも学べますので、一般の成人であれば、どなたでも簡単に学ぶことができます
禅で言う無我の境地を、TMでは純粋意識と言うのでしょうか。
はい。無我の境地と純粋意識は瞑想中の心の深い同一の体験と言えましょう。マハリシは、人間の心は海の構造に似ていると解説しています。海は、表面が波立っており活発に動いています。海の内側深くに入っていくと、水の動きは徐々に静かになり、海底付近ではほとんど動きはありません。そして、海底に到達します。人間の心はこの海に大変よく似ており、表面レベルから深いレベルまであります。TMをはじめると、心は表面レベルから徐々に内深くに入っていき、落ち着いてきます。心の活動が減少し、静寂の状態が深まります。そして思考レベルの最も微妙なレベルを超えて、心は純粋意識に到達します。この状態では、心の活動すなわち思考活動はまったくなく、完全に目覚めた「意識だけ」が純粋に存在するので「純粋意識」と呼ばれています。この純粋意識を超越意識とも呼び、禅では無我の境地と呼んでいます。純粋意識は自然法則の源、自然法則の統一場など、様々な言葉で表現されています。この純粋意識を体験すると、心身が自然法則に調和した働きをするようになります。
自然法則と調和するために、健康にも良いのですね。
はい。そのとおりです。TMにより純粋意識を体験しますと、心身の働きが自然法則に調和してきます。健康とは自然に調和した心身の状態と言えます。TMにより健康が増進されることは、科学的にも計測されています。1971年、ロバート・キース・ワレス博士によりTMの科学的研究がはじめて行われました。それ以来、TMに関する様々な研究が、世界各国の200以上の大学や研究機関において実施されてきました。TM中の生理状態の変化、脳波の計測、血液中の成分やホルモンの変化、記憶力や創造性のテストなど、その研究の範囲は、生理学、心理学、社会学、環境学に及んでいます。それらの実験や研究をとおし、これまで600件以上にのぼるTMに関する研究論文が発表され、TMが心身の健康の改善に役立つことが立証されています。このようにTMは極めて有益な瞑想法ですから、多くの方に体験していただきたいと思います。